「投げる…throw…投…投入…」
ルームメイト:「ヘイ、家でも研究のこと考えてるなんて言わないでくれよ。最近いつも頭抱えて何やってんだ?」
「Poem.」
「へ?そんなロマンチックなやつだったっけ。恋でもしたのか」
「あ、ポエムって言っても『薔薇は赤い菫は青い』みたいなのじゃなくて、tankaって言うone-linerの定型詩でね、友達がやってるのを前に見ていいなぁと思ったから、試しにネットの歌会に出してみてるんだ。今日は『投 throw』がお題なんだけど難しくて」
「One linerじゃ韻も踏めないじゃないか。なんでそれがただのフレーズじゃなくて詩って扱いになるんだ」
「いや、韻の代わりにリズムが決まってるんだよ」
「リズム!おもしろそうじゃないか」
「31音節にまとめるルールなの。たたたたたーたたたたたたたーたたたたたーたたたたたたたーたたたたたたたーって!」
「ノリノリだな」
「そう?」
「しかしそんな短くて何をどうするってんだ」
「そこに情景や心情を詰め込んであとは読者の想像に任せるんだよ。Haikuっていうもっと突き詰めたタイプもあって、それは575でおしまいだ」
「もうそれ何も入らないよ」
「実際本当に最低限で、情景描写したらそれで詩そのものはおしまいってパターンも多い」
「例えば」
「たぶん一番有名なのは… An old pond, a frog jumps in, sound of water」
「(爆笑)ジョークだろ?! だからどうしたって感じ」
「水音が妙に大きく聞こえて、しばらく揺れている水面とかを思い浮かべて鑑賞するんだよ」
「それならなんか俺も作れそうな気がしてきたぞ。さっき『throw』って考えてたな。こんなのはどうだ。Wind throws leaves up in the air… tranquility!」
「Tranquilityのとってつけた感w」
「Sound of water!と似たようなもんだろ」
「まぁね…それに英語でhaikuするなら音節数を575にするんだよ」
「英語どうでもいいよ。翻訳して日本語で575にしてくれよ」
「人任せかよ…えーっと、木枯らしが落ち葉静かに投げ上げる」
「何言ってるかわからないけどそれっぽいわ。このポストイットに書いてくれ」
「書いた」
「読み方も」
「はいはい」
「よっしゃ」
「わざわざノートに貼るのかよ」
「来週までにはネットでの歌会とやらでお前の票数を抜く」
「それは短歌の方だよ」
「そうか」
※ なお、ツイッターでは「静やかに落葉舞わせる秋の風」という名訳を頂きました。